静岡エリアの採用市場動向

静岡エリアの採用市場動向

静岡エリア全体の最新動向

静岡県は、1969年の東名高速道路の開通をきっかけに首都圏や関西都市圏にある大手企業の生産拠点の進出が増加したことで、国内有数の産業集積地となり、「加工・組立型のものづくり県」と言わしめる特色があります。

静岡県内全域において、自動車最終品メーカーや、それを下支えするサプライヤー企業や中小製造業などが数多く拠点を構えます。

自動車業界全般としては、2020年に入ってしばらくは、生産中止や延期などの影響がありました。しかし、国内外の自動車受注増を受け、経済は回復しています。また首都圏の都市部ほどではないものの、静岡県内の企業においても、デジタルトランスフォーメーション(DX)への取り組みが見られるようになってきています。

静岡西部

静岡西部では、自動車メーカーやサプライヤー、産業機械や金属加工品、プラスチック成形品などを納品する中小製造業も数多く、家族経営の企業も目立ちます。

愛知県に隣接する西部産業の中核を担う浜松市は多くの自動車メーカーが開業した地として知られています。自動車業界全般で電動化が加速するなか、従来のようにエンジン単体だけではなく、電子制御システムを実装しモジュール化された製品なども増えています。

また浜松市内では、市で取り組む事業補助金制度を受けて、ベンチャーやスタートアップ企業も出てきています。

静岡中部

中部エリアも西部と同様に、自動車メーカーや関連サプライヤーの生産拠点が目立ちます。

静岡中部では自動車工場の生産ライン向け機械を納入するメーカーが多くあり、ファクトリーオートメーション(FA)関連が非常に好調です。受注増に備えるための生産効率向上や、少子高齢化に伴う人手不足に対応するため、生産の自動化に投資する企業も増加しています。

その一方、今も半導体を中心とした部品不足の問題がいまだに解消されていないことから、自動車自体が受注数は増加傾向にありますが、部品の調達に苦戦し生産がままならないという企業も少なくありません。

静岡東部

静岡東部では、富士山麓の水資源が育んだ製紙業や食品業、医薬品、およびそれら分野に関連した機械工業が盛んです。製紙業については、従来のようなトイレットペーパーや段ボール製品も堅調です。

最近は、オンライン(EC)通販の人気が高まっていることから、特に段ボールの生産が増加しています。また、介護向けのウェットティッシュや汗拭きシート、除菌シートなど特定の目的に応じ、機能性を持たせた製品の取り扱いが増えています。また製紙業で培われた薄物を加工する高度な機械技術が、燃費向上や省エネの観点から軽量化が求められる自動車分野で応用されています。

製紙業はペーパレス化による紙の需要減の影響を受けてはいるものの、採用が活発な企業においては、これからの時代に合わせたビジネスシフトに意欲的に取り組む動きがよく見られています。

また富士市を中心として、セルロースナノファイバー(CNF)の産学連携プロジェクトが進められており、将来の製紙業における新たな産業創出にも地域で取り組んでいます。

静岡エリアにおける製造業の採用動向

生産技術や設備保全の採用

生産技術や設備保全の経験者は、製造業ではどこの現場でも採用ニーズがあります。

なかでも、製造業界の中小企業の生産管理においては、局所的な専門性がある方よりも、部品加工から組み立て、出荷までの流れを一通り理解している人のほうが、大量生産、小ロット生産にかかわらず、業務に柔軟に対応できる可能性が高いため、採用ニーズが非常に高い傾向にあります。

新規事業の立ち上げの採用

大手企業や上場企業を中心に新規事業の立ち上げを担う求人が増えています。

例えば自動車に関する特定の部品を作り続けてきた企業が、異業種・分野も積極的に視野にいれ、これまでとは全く異なる新たな製品やサービスに取り組むといった動きです。その中で、何もないところから立ち上げる、いわゆる“ゼロイチ”の事業計画に取り組める人材や、市場分析も含めて、新事業立ち上げにかかわった経験、新規業界での新たなコネクションを開拓して交渉もできるような人を採用する動きがみられます。

購買・SCM関連の採用

業種に関わらず、半導体など供給部品のサプライチェーン混乱や、引き合い増による調達業務の増加などを受け、SCM(サプライチェーンマネジメント、調達管理)の見直しを図るために、購買・SCM関連の採用も活発化しています。

DX推進関連の採用

社内SE関連でも、従来の内製システムや帳票システムベースの管理から変革し、統合管理システムの導入を進める旗振り役を求める求人が増えています。

静岡西部エリアは中小製造業の比率が非常に多いことから、AI(人工知能)やIoT(モノのインターネット)など先端のITを取り入れる動きよりは、紙や帳票ベースの情報管理をひとまずデジタルデータ化したいという、初歩的なDXへの取り組みがまだ多い状況です。

そのため、データサイエンスなどハイレベルなITに関わった経験というよりは、社内SEとしてITシステムの導入や刷新にかかわった実績のあるような人を採用する動きがみられます。

静岡東部エリアでは、巣ごもり需要の影響もあり、一部の食品業は売り上げが比較的好調です。そのためITシステムに投資し、より生産効率を高めるべくDXに取り組もうとする動きが見られ、西部と同様に社内SEなどのIT担当の採用ニーズが出てきています。

経営者や幹部候補の採用

家族経営系の中小企業では、後継者がいない、もしくは家族が若く経験不足であるといった背景から、外部から経営者や幹部候補を募る求人もあります。中小企業は年功序列的な企業文化は濃いものの、大手企業と比較すれば経営にかかわるチャンスが格段に多く、やりがいも大きくなります。

静岡の中部・東部エリアでは、投資ファンド企業が中小製造業を買収した後、その経営トップ、もしくはその右腕を担う人材の求人がよく見られます。そのような求人では大手企業から、または首都圏からの経験者が採用される傾向にあります。

静岡へUターン・Iターン・Jターン転職を希望する候補者の傾向

Uターン・Iターン・Jターンなど、県外からの転職を希望されている方の転職理由は、配偶者などの家族や親せきが静岡に居住していることや、お子様がある程度成長した、40代後半~50代のかたが目立ちます。年収にこだわらず、静岡という土地や街に魅力を感じている、あるいは私生活の質の向上を求める方が多くなっています。

また、60代以降のシニア世代の転職が決まりやすいことから、新天地で生涯にわたり働き甲斐や新たなチャレンジを求める方も多い傾向にあります。

静岡エリアにおけるエグゼクティブ・管理職の採用動向

静岡エリアは地元の人材だけでは賄えないため、他エリアから人材を迎えることにも積極的になっています。そのため首都圏をはじめ大都市圏でビジネス経験を積んだ40代~60代の方々が、静岡の企業にエグゼクティブ・管理職クラスのポジションで採用される事例が近年増えています。

「故郷へのUターン」ではなく、「自身の経験・スキルをいかしたい」「理念・ビジョンに共感できる企業で働きたい」という志向を軸に企業を探した結果、静岡で採用され、移住あるいは単身赴任という形で勤務しています。

静岡エリアにどのようなエグゼクティブ採用ニーズがあるのかをご紹介します。

事業承継に際し、次の経営層としての採用

事業承継時期を迎えた企業では、「新社長」あるいは「2代目・3代目社長を支える経営陣」としての採用ニーズがあります。

例えば、大手企業グループの建築系子会社におけるCEOのポジションでは、メーカーで子会社経営を経験した方が採用されています。素材メーカーでは70代の社長が「次期社長候補」を募集し、海外現地法人の役員を務めた経験を持つ60代前半の方が採用されました。

「現在、部長・取締役を務めている息子が数年後に次期社長に就任するが、まだ30代で経験が浅いため、参謀として支えてほしい」といった採用ニーズでは、40代~50代の方が採用されています。 経営企画、あるいは子会社や海外法人の経営経験を持つ方が歓迎され、なかには60代のシニア層が採用される事例もあります。

新規事業を推進するマネジメント経験者の採用

静岡にはガソリン系の部品メーカーが多く、今後EV化にともなうマーケット縮小を見据え、新製品・新事業の開発に乗り出しており、メカとエレクトロニクス両方の知見を持つ人材を事業統括責任者として迎えたいという採用ニーズが出てきています。

実際に50代後半の方が新規事業部長のポジションで採用された事例もあり、こうしたプロジェクトマネジメント・ピープルマネジメントの経験を持つエンジニアの採用ニーズは今後も広がっていくと見込まれます。

海外市場の開拓/海外子会社管理を担う人材の採用

海外の販路開拓を担えるエグゼクティブの求人も多く出てきています。消費財メーカーでは、中国での販路開拓を目指して経験者を募集し、BtoC商材に強みを持つ40代後半のメーカー出身者が採用されています。

現地への出張が制限されていたこともあり、リモートで海外の販路開拓を推進できる人材の採用ニーズが高まっています。

静岡では、2011年~2015年ごろにかけて、タイやインドネシアへの進出ラッシュが起きました。大手自動車系列企業はメキシコなどの南米地域にも拠点を持っています。

こうした企業では、コロナの影響で任期延長となってしまっている海外駐在中の社員が多いものの、交代で送る駐在要員不足から海外拠点の駐在員を求め、中途採用を行っています。採用ニーズとしては、海外駐在経験があり、英語+現地語(タイ語・インドネシア語など)ができる方となります。

このほか、数年後に現地法人の役員や管理職として海外赴任することを前提に、当面は国内で勤務する海外事業要員を採用する動きも見られます。

IPOを目指す企業が、CFOはじめ管理部門人材の採用

浜松エリアでは、行政がベンチャー企業の支援に力を入れており、バイオベンチャーやITベンチャーなどが多くなっています。IPOを視野に入れ、CFOや管理部門人材の採用ニーズが出てきています。

社外取締役の採用

近年のコーポレートガバナンス強化の潮流を背景に、社外取締役の採用ニーズもあります。

特定の分野での専門性を持つ方を対象とするほか、女性活躍推進法の観点から、女性社外取締役の採用ニーズも高まっています。 以前の「社外取締役」は形式的なところもありましたが、最近では経営会議に入って影響を与えてくれることを期待する傾向が見られます。

静岡エリアでのモデル年収

静岡エリアでのモデル年収は業界や年代に関係なく、課長級で600万~900万円、部長級で800万円から1000万円となっています。また中小企業の年収平均は、中堅・大手企業と比較して50万円程度下がる傾向にあります。

首都圏から静岡県内に転職されてきた場合、年収としては50万~100万円近くダウンすることが多い一方、物価や地代が安く、生活費が安価に抑えられるため、生活水準としては、それほど大きく変わらずに済ませることができます。

業界・企業規模役職モデル年収
製造業(機械設備)主任・係長級500万~700万円台
製造業(食品メーカー)、生産管理・製造管理主任・係長級500万~700万円台
製造業課長・次長級600~800万円
中小企業600万~700万円
中堅/大手企業700万~800万円
製造業部長級800~1,000万円
中小企業700万~900万円
中堅/大手企業800万~1000万円
製造業役員級1,000~1,400万円
中小企業900万~1200万円
中堅/大手企業1000万~1500万円


静岡エリアでの人材採用にお悩みの際はご相談ください。