北関東エリアの採用市場動向
北関東エリア全体の最新動向
北関東エリアの製造業の最新動向
北関東には大手自動車メーカーや、そこに紐づくTier1(ティアワン)サプライヤーの拠点が点在しています。また、半導体や電子部品、機構部品、製造設備などを納めるTier2(ティアツー)以下の金属加工業や装置メーカーも数多くあります。
自動車関連企業では、自動車の電動化にシフトしてきていることから、半導体需要が高まっています。そうした背景により、半導体関連の電子部品や素材の製造、半導体製造装置を製作する企業が活況です。
北関東エリアの製造業では、従業員数200~1000人程度の中小企業が多く、東京圏のトレンドとなっているDX(デジタルトランスフォーメーション)の取り組みに関しては「まだまだこれから」という段階です。ただ、北関東の企業は、東京圏の大手企業の後ろをついていくような形で技術トレンドが盛り上がっていくことが多いため、DXについても今後、確実に加速してくると考えられます。
中小企業においては、企業規模と景気の良さがあまり連動しておらず、業績が優れた会社は、「業界の変化に柔軟に対応し、業界のトレンドにうまく乗っている」傾向がみられます。また北関東では、他の地方と同様に、事業の後継者確保に頭を悩ます中小企業が多くなっています。
北関東エリアのサービス・小売業の最新動向
ここ数年の巣ごもり需要増加の影響から、ホームセンターやスーパーなどのサービス・小売業は実店舗だけでなくオンラインストアの売上も増加傾向にあります。この急速な売上向上に伴い、WEBサービスの整備や物流の仕組み作りなどが課題となっています。今まではWEBサービス制作や物流業務を外注していた企業も、情報共有や作業スピード、コストなどの面から内製化する動きが活性化しており、消費ニーズに柔軟に対応できる企業体制を構築しようとしています。
また市場自体が成熟していることもあり、いかに他社と差別化して価値を作り出していくかも課題となっています。サービス・小売業ではオリジナリティあふれるPB商品が差別化の糸口として大きな役割を担っており、北関東エリアでもPB商品開発に力を入れる企業が増えています。
北関東エリアのUターン・Iターン・Jターン転職の実態
UIJターン(U・I・Jターン)転職は、北関東エリアが突出して多いわけではありませんが、UIJターンの受け入れ率自体は高くなっています。
また、北関東エリアは移住者の定着率が高くなっています。そのため、これまでとは違う土地で、新しいことにチャレンジしたい人、経営で手腕を発揮したい人にも向いています。
北関東エリア全体の採用動向
北関東エリアの製造業の採用動向
北関東でも、多くの中小企業が抱えるような、後継者問題や人手不足といった課題を慢性的に抱えています。
そのため40代以降を中心に、年齢の上限を気にすることなく、実務経験や能力重視で採用するといった求人がよく見られます。65歳以上のシニア世代の採用にも前向きです。
また、意識が高まっている「SDGs」や「ESG」に関しては、取り組んでいく必要があると考えているものの、北関東エリアの企業ではまだまだ手探りの状態です。しかしながら、地方銀行がサポートに乗り出しており、施策が具体化すれば新たな採用ニーズがうまれる可能性があります。経営企画・広報・IRなどのポジションで、「SDGs」「ESG」への対応や戦略を企画・実行できる人材を受け入れる動きが今後出てくるかもしれません。
北関東エリアの企業は、求人票の内容と一致しなくても、そこには書かれてない企業のニーズや意向と一致さえすれば採用される傾向が顕著です。そういった意味では、まず「人柄重視」である側面が強く、企業や採用担当者との相性も影響してきます。都内勤務だと、レベルが高いとは評価してもらえないような、ごく一般的なシステム系業務の経験が、北関東エリアでは高度なスキルであると評価されることもよくあります。
北関東エリアの製造業における求人職種
多くの職種で求人がでてきていますが、継続的にニーズがあるのが、生産技術と品質保証の職種です。また、製造業全般で抱えるサプライチェーンの課題を受け、購買関係の求人も増えてきています。生産技術や調達の職種においては、特定部門の業務に特化していることよりは、さまざまな部門をまたいで業務をこなした経験や実績、現場で実際に手を動かした経験などが採用においては評価される傾向にあります。
業績好調な企業では新規分野の開拓に意欲的であることから、主力事業からスピンアウトさせ、異業種での新規事業開発をする動きも出てきています。例えば、自動車部品などのメーカーが自社の技術をいかし、ヘルスケアやライフサイエンス分野に参入していくといった具合です。その場合は技術系・ビジネス系に関わらず、ヘルスケア・ライフサイエンス領域の知見・経験を持つ方を新規事業開発職として迎えたいとする採用ニーズが出てきています。
北関東エリアは、Tier 2以下の中小企業が多いことから、都内の大手企業で生産技術や品質保証を経験し、大手企業のものづくりを一通り知っている方、ISOの推進や標準化に取り組んだ経験のある方なども求められています。
北関東エリアのサービス・小売業の採用動向
これまで新卒一括採用が主流だった企業が、ここ3年ほどで即戦力となる中途採用を始めるケースが多く見受けられます。
北関東エリアの小売・サービス業では、デジタルや物流、PB商品の業務を内製化する動きが加速しており、採用市場ではそれらの内製化を実現できるための人材が求められています。
北関東エリアでは、今まで「アプリ開発を外部のベンダーに依頼する」「物流の仕組み作りを物流会社に一任する」といった外部に委託していた企業が多く、社内に人材もノウハウもない状況でした。しかしここ3年で、ビジネス環境や消費ニーズの変化の激しさから、時代に柔軟かつ迅速に対応できるよう内製化を進める動きとなっています。
デジタル系職種の採用動向
今まではインフラ整備こそ社内で対応していたものの、WEBサイトやアプリなどの構築・開発は外部の企業に依頼することが多く、社内にWEBやアプリのエンジニアはいない状況でした。しかしECサイトでの商品販売やアプリでのクーポン配布・ポイント付与などデジタルマーケティングが加速したことで、サイトの仕様変更やアプリの新機能追加などに迅速に対応できるよう、サイトやアプリの開発ができるエンジニアやデジタルマーケターの採用需要が急増しています。
またECサイトでの売れ行きが増えたとはいえ、実店舗へ足を運ぶ消費者が少なくなったわけではなく、チラシや商品レイアウトなどのオフライン施策もまだまだ高い効果をあげています。オフライン施策・オンライン施策を掛け合わせた「OMO(Online Merges with Offline)戦略」を北関東エリアの企業も取り入れるようになっており、デジタルの知見だけでなくオフラインの知見を持っている方の採用ニーズが高まっています。ただ、業界内でOMO戦略が注目され始めてまだ日が浅いため、OMOについての経験がなくても、知識があれば採用されるケースも出てきています。
物流部門の採用動向
ECサイトの売上拡大に伴い、物流の仕組みを変えている企業が多く、新しいセンター立ち上げや物流システムの構築が進んでいます。またDX化の波は物流業務にも押し寄せており、自動化機器の導入が加速しています。採用市場でもセンター立ち上げやリニューアル、センター長、自動化機器の導入などを経験している人材が重宝されている傾向です。
小売・サービス業では、物流が肝になります。そのため即戦力が期待されており、知識と実務経験の両方が求められます。特にDX化は各社の課題でもあるので、自動化機器の導入経験や物流システムの構築などのDX化経験があるほど採用ニーズが高まります。
PB商品開発の採用動向
小売業界では、他社との明確な差別化のために、オリジナリティあるPB商品が注目されています。北関東エリアの小売業でもPB商品に注力する企業が増え、それに伴い商品の企画・開発ができる人材の採用ニーズが高まっています。同業界内での経験だけでなく、メーカーでの商品開発経験や、PB商品を作るための交渉ができるようなマーチャンダイザー経験がある方が採用されています。
またPB商品は多種多様に展開されているものの、人材としては幅広い商品の開発経験があるよりも、特定のジャンルに特化した開発経験があるほうが重宝される傾向にあります。
北関東エリアのエグゼクティブの採用動向
各企業に共通した傾向があるわけではなく、「経理や金融関係に強い方」「ある技術に特化して強い方」「営業が強い方」など、企業や求人タイミングによってさまざまです。経営経験についてもあまり問われず、100人規模のチームをまとめた部長職の経験があれば、相応の経験があると判断され採用されることもあります。
またこれまでエグゼクティブクラスの人材を採用した経験がない中小企業が多く、1人採用するだけでもその企業においては大きなインパクトとなります。それだけに、会社の事業変革・風土変革・事業成長のけん引役を担ってほしいという期待があります。
具体的には、自社より規模の大きい会社で先進的な取り組みを経験した人材を迎え、自社にない知見やノウハウを導入してほしいと考えています。「DX(デジタルトランスフォーメーション)」「SDGs」「ESG」など、トレンドにも明るい経験・知識を持つ方は歓迎されます。
また、自社の事業に対して熱い思いを持つ経営者が多いため、自社の理念に共感し、志を同じくして取り組んでくれる方を求める傾向が見られます。
事業承継の課題解決
北関東エリアのエグゼクティブ採用は、経営者の高齢化による「事業承継」の課題解決を図るものが多くを占めています。60代~70代のオーナー経営者が40代~50代の親族に引き継ぐに際し、経営幹部層の一部の入れ替えや、外部で経営の経験を積んでこられた方を招き入れ、そのノウハウを自社に役立てるべく、幹部人材の採用ニーズが高まっています。
事業承継をして企業を未来につなげていくために、ゆくゆくは次世代の役員となる見込みのある人材を必要としている企業も多く、エグゼクティブ求人が増加しています。求人を出しているのは、50名~300名規模の中小企業が中心です。自動車部品をはじめ、電子部品、半導体、機械、装置などのメーカーが多く見られます。
首都圏を中心に他エリアから人材を迎えることで事業承継に成功した事例などもうまれており、事業の立て直し、事業の成長をけん引できるエグゼクティブ人材のニーズは今後も高まっていくと見込まれます。
採用ポジションとしては、「経理・財務部長」が多く、経営者のパートナーとしての期待が寄せられています。50代の方が積極的に採用されている事例もあり、経理・財務の経験を積んだ方だけでなく、資金調達や銀行折衝を担う財務職の場合は金融機関出身の方も採用ターゲットとなっています。
海外事業の後継者
国内マーケットが縮小に向かうなか、北関東エリアの自動車部品・電子部品・半導体・機械・装置関連のメーカーは以前から海外展開を進めています。海外子会社の管理、現地の工場長だけでなく、現在赴任中の方の高齢化が進んでおり、その後継者となる人材を採用するケースも多く見られます。
求められるのは、経営も生産ラインもジェネラルにカバーできる人材です。アジアを中心にメキシコやインドなどのエリアでの求人が増えており、これらのエリアでの駐在経験があり、現地でのマネジメントを手がけていた方が採用ターゲットとなります。