インフラ/プラント業界の採用市場動向
インフラ業界の最新動向
IoTやAI技術の進展
インフラ業界も多くの業界同様、IoTやAIの導入が進み始めています。特に、交通インフラでの「MaaS(モビリティ・アズ・ア・サービス)」の導入が注目されています。これは、バスやタクシーの運行にAIや自動運転技術を活用する取り組みです。
交通分野だけでなく、他のインフラ分野でもIoTやAI技術の導入が進んでいます。
日本では戦後10~20年間に作ったインフラが老朽化し、保全・改修することが必要になっています。また、大規模な自然災害によってインフラが壊れてしまい、再構築する事も増えてきています。インフラ業界では、こうしたケースにIoT・DXを導入し、インフラ設備の歪み具合を調べています。
保全・改修の場面以外でもIoT・DXの技術がインフラ業界で使われるようになっています。例えば、ダム建設のような現場が山奥の場合、往復に多くの時間がかかります。そこで現場に行くことなく現場を仮想空間にすることでVRを活用しながら効率化をはかるといった取り組みが行われています。
防災関連では、防波堤を高くする、避難経路の整備、川が氾濫しそうになったらアラートを飛ばす、といったものが東日本大震災以降に増え続けています。
海外では鉄道・空港の大型案件が相次ぐ
近年、生活が豊かになった国が増えたことで、海外の大型案件も増えてきています。インフラは必要性の高いものから整備するのが一般的で、電気、上下水道、道路などがまずは優先されます。
さまざまな国で富裕層がうまれることで、その国に鉄道や空港などが必要とされてきます。現在、多くの国で鉄道や空港を作る段階に差し掛かっており、それによってこれらの案件が急増しています。
日本政府がODA(政府開発援助)で海外案件を援助しているため、日本の建設コンサルタントが関わっています。
ひとくくりにODAの案件といっても、無償案件と有償案件の二つの案件の種類があります。
無償案件は日本のお金でインフラを作るため、どういった企業をプロジェクトで使うかも日本の自由になります。そのため、基本的には建設コンサルタントもゼネコンも日本企業に発注することになります。
有償案件の場合は、ゼネコンは現地企業に発注することが多いですが、建設コンサルタントには日本企業を選び、現地のローカル企業の取りまとめを依頼されるケースがよくあります。
海外案件では、これまで日本の技術力の高さが評価されてきました。しかし、世界の建設コンサルティング業界における日本企業全体のシェアは、実は1%未満です。その状況に加えて近年は中国や韓国企業との受注競争が激化しています。そのような背景からODAだけに依存するのではなく、世界のマーケットにも目を向け、専門部署の立ち上げや、外国人のキャリア採用を増やしたり、海外支店を設立する企業が増えています。
インフラ業界の採用動向
従来の海外案件はほとんどが公共の案件でしたが、競争激化に伴い民間が運営する鉄道や空港などの案件も受注するように変わってきています。こうした状況に対応するため、海外で働けるエンジニアの募集が増えています。
また、日本では、社会基盤となるインフラが既にかなり整っていますが、国によっては社会インフラだけでなく環境、保険、医療、教育といったソフトインフラが整っていないケースがあるので、そういったインフラを整備する案件を、日本の建設コンサルタントが受注するケースが多くあります。
このように国内外で受注が好調である一方、現在は30~40代の建設コンサルタントが不足しています。そのため、人手不足が原因で全ての案件を受けることができず、一部を断っているという企業が増えており、建設コンサルタントの採用は活発化しています。
一方で、ベテランエンジニアへの採用ニーズも高くなっています。インフラ業界は60歳以降も長く働くことができます。ゼネコンやメーカーは55歳を超えると年収が下がるケースが多いですが、建設コンサルタントの場合は、定年後も長く働けることが多いため、転職によって生涯年収を増やすことが可能な業界だといえます。
プラント業界の最新動向
効率化や生産性アップがトレンド
プラントは、新規設備の設計・開発だけでなく、既存設備の保全・改修に関する業務も多くあります。なぜなら、大型の施設でたくさんの機械や電気を使用しており、既存設備に不具合が起こることがよくあるからです。
日本には戦後に作られた大型プラントが多く、老朽化が進んでいます。そのため近年は、最新のプラント設備に更新する企業が多く、またそれと同時に、AIやIoTを活用した自動運転や保全・点検などを導入し、稼働を効率化する取り組みも進んでいます。このような“効率化”や“生産性アップ”といったワードが業界のトレンドと言える状況になっています。
多くの企業が数百億~数千億円の設備投資をしている状況ということもあり、「それだけ多くのお金が動いている業界」ということで転職を希望する人も増えています。また、慢性的に人が足りていないという状況もあり、採用ニーズも非常に多くなっています。
設備面以外でも、プラント業界にはさまざまな変化が起きています。製造業などプラント全般においては、CO2排出量、温暖化対策、環境配慮、サスティナビリティというキーワードからビジネス転換が迫られており、各業界で環境ビジネスへの参画が発表されています。例えば石油元売企業は、これまでのビジネスの転換が迫られており、水素ビジネスへの参画を発表しています。こうしたケースでは、新たな事業展開によるプラントを建設することになります。
また、エンジニアリング会社のEPCコントラクターには、プラントオーナー企業の一部門からスタートし、その後分社して親会社以外の外販を強化している企業が多くあります。近年は、そういった企業が親会社とは関連しない分野のプラントについても手を広げ、多角的に事業展開しているケースが増えています。
プラント業界の採用動向
テレワークなど働き方に考慮した企業が増加
プラントエンジニアリング業界は、全国転勤や原則出社というスタンスが多い業界でしたが、昨今の人材不足により採用企業もさまざまな打ち手に取り組んでいます。例えば、転勤無しの総合職制度やDXによるテレワークが可能など、働き手に考慮した大手企業が増えています。これは「プラントエンジニア」という職種において、突発・緊急対応などが当然という考えが古くなりつつあるといえます。
新卒採用重視だった企業も中途採用を開始
新規事業に参画する企業の多くは、その業界に詳しいスペシャリストを採用しようと考えています。大手のプラントオーナーは、長年に渡り新卒入社の社員が中心で中途採用をほとんど実施してきませんでしたが、新規事業への参画によってその流れが変わりはじめており、ここ5~10年で中途採用を本格的にスタートしたという企業が非常に多くなっています。
AIやIoTに強い人材の効果的な採用方法を各社検討中
現在採用ニーズが多いのは、機械や電気はもちろん、プラントのライン全体を見るプロセスのエンジニアや、新しい設備を導入するための調達などに関する人材です。また、運用の効率化のために近年導入が進んでいるAIやIoTについて、理解がある人材も求められています。
AIやIoTに強い人材については、どうやって必要な人材獲得するか各社悩んでいる状況です。ITへの知識に加えて、自社の業務を理解して効率化を進める必要があります。そういった条件を満たす人材はITベンダーにもライバル企業にもなかなかいないので、どこからどうやって採用するか、各社が検討を進めている最中です。
プラントエンジニアの場合、異業界であっても採用したいという声もある一方で、企業が運用しているプラントの規模感によって必要な技術や設備が変わるので、箱型のプラント運用をしていた方が、大型のプラントを持っている企業に移るのは難しいという傾向もあります。
プラントオーナー企業からEPCコントラクターへ、その逆であっても採用したいという企業はあります。特に受注側のEPCコントラクターから発注者側のプラントオーナー企業に行きたいと希望する候補者が多くなっています。理由としては、より上流の仕事内容に加え、発注側の方が受注側より時間に自由が利きやすい、ワークライフバランスに優れている、といった魅力があるようです。