DX人材を採用するには?DX人材に求められる資質と採用を成功させるポイント
DX人材とは
DX人材とは、デジタルトランスフォーメーションを推進するために必要なスキルを持つ人材のことです。
企業がデジタル技術やデータを活用して競争優位性を高めるためには、DX人材の採用が不可欠です。では、具体的にどのような資質やスキルを持った人材がDX人材として求められるのでしょうか。
DX人材に必要な資質・スキル
以下の資質やスキルを持つ人材を採用することで、企業はDXを推進することができ、競争力を加速することができます。
テクニカルスキル | プログラミング、データ分析の能力 |
ビジネス視点 | 新しい価値を生み出し、事業を変革することができる |
コミュニケーション能力 | 組織の中で主体性をもちながらも、柔軟性をもち、人を巻き込んで進めることができる |
ドキュメント作成能力 | ITリテラシーが高くない人にもわかりやすく説明することができる |
メンタリティ | プロジェクトがつまづいても、壁を乗り越えることに面白みを感じることができる |
学習意欲 | 常に最新トレンド技術に敏感である |
DXを推進するための主要6職種と求められる役割とスキル
PM(プロジェクトマネージャー)
企業課題の解消を推進する中核的な役割であることから、幅広い経験が求められます。具体的には以下のような経験やスキルが必要とされます。
- 基幹システムの刷新に関するプロジェクトにおいて受発注や要件定義、企画、設計に携わった経験
- SAP、ERP、SCM関連システムの導入プロジェクトに携わった経験
※いずれも数千万円から数億円規模のプロジェクト
インフラエンジニア
サーバーやネットワークの設計・構築・保守を行ったり、クラウド環境への移行を担います。インフラエンジニアには以下の経験やスキルが必要とされます。
- AWS、Azure、Google Cloud Platformなどの主要クラウドサービスへの移管・運用経験
- クラウドとオンプレミス両方の運用の知見
- 外部ベンダーのコントロールだけでなく、自分で手を動かして環境構築できる
アプリエンジニア
アプリケーションエンジニアは業務専用アプリケーションを開発するエンジニアです。アプリケーションの構想段階から保守まで開発まで参加します。アプリエンジニアには以下の経験やスキルが必要とされます。
- 業務システムに対する理解(例:会計システムの知識・経験)
- システム導入の上流工程から携わった経験
- 開発とPMの両方の経験
セキュリティエンジニア
セキュリティエンジニアはITインフラの中でもサーバーをセキュリティに配慮した設計や運用、サイバー攻撃を未然に防ぐ調査や対策を行います。セキュリティエンジニアには以下の経験やスキルが必要とされます。
- SOCやCSIRTの構築・運用に携わった経験
- ネットワークエンジニアとしてセキュリティ関連の業務に携わった経験
- ゼロトラスト対応に携わった経験
データベースエンジニア/データサイエンティスト
データベースエンジニアはデータ分析基盤の設計や構築を主に行います。データサイエンティストはデータ分析をビジネス課題の解決や、新規事業の提案を行います。両職種データ分析に携わる点では同じですが、データベースエンジニアは分析基盤の構築・設計、データサイエンティストはそれを活用しデータ分析・ビジネスに活用します。データベースエンジニア/データサイエンティストには以下の経験やスキルが必要とされます。
- Oracle databaseやTeradataによるデータベース構築
- InformaticaやTableauなどのBIツールの導入・運用
- 解析したデータのダッシュボード化・可視化に関連する業務
DX人材採用の市場動向
最近の動向を見ると、DX人材の採用はますます需要が高まっています。JAC Recruitment調べで、2018年比で2022年はポジション名に「DX」を含む求人数が約30倍になっています。この傾向は2024年以降も継続すると思われます。
DX人材採用市場は非常に競争が激しく、企業は積極的な採用活動を行っています。デジタル専門の職種やスキルセットを持つ人材は引く手あまたであり、採用企業側は相応の待遇や働きやすさを提供する必要があります。また、DX推進が進んでいる企業では、ピンポイントな課題を解決できる方を採用する傾向があり、課題解決できる専門性を持つ方の採用が進んでいます。
一方、DX人材自体も育成やキャリアパスの機会を求める傾向があります。デジタル技術は日々進化しており、DX人材も自己啓発や最新のトレンドに関心を持ち続ける必要があります。採用企業はDX人材の成長を支援する環境を整えることで、人材の定着や組織の競争力向上につなげることができます。
職種ごとにDX人材採用動向を解説します。
ITインフラの老朽化に伴うPM(プロジェクトマネージャー)の採用
ITインフラの老朽化(既存ITシステムのレガシー化)が、多くの企業のDX推進を遅らせている要因となっています。中小企業だけでなく、一部の大企業でもオンプレミスによる運用からクラウドへの移行にこれから着手するというケースも未だにあります。
そのため、自社システムの全体を把握しどう整備していくかを、ベンダーコントロールを含め進捗管理できるPM(プロジェクトマネージャー)の採用を考える企業が引き続き多い状況です。
UI/UXへの知見がある人の採用
エンタープライズ系企業に顕著な課題として、UI(ユーザーインターフェース)/UX(ユーザーエクスペリエンス)に対する知見不足が挙げられます。その対応策としてフィンテックや小売、大手ITプラットフォーマーなど、DXによるUI・UXに対するナレッジと事例が豊富な業界から積極的に人材を採用しているケースが目立ちます。
社内データの環境整備を行うデータアーキテクトの採用
DX推進する上でのITインフラ整備の次のステップとしては、データを適切に利活用するための環境整備も必要です。
さまざまなデバイスやアプリケーションに対応するデータベースの構築だけでなく、社内に点在するデータ統合ツールや可視化ツールの導入、そしてデータ解析した結果を可視化して現場に届ける仕組の構築など、社内にある情報資産を活用することがDXの命題です。
グローバル製造業企業など大企業の中でもトップのエンタープライズ系企業では、データのアーキテクチャを根本から再定義する動きもありますが、データアーキテクトを担う人材は絶対数が非常に少ないため採用を継続的に行っています。
セキュリティ対策を行うセキュリティエンジニアの採用
上記のような「攻めの投資」だけでなく、セキュリティ対策などの「守りの投資」も欠かせません。サイバー攻撃や内部不正によるセキュリティーインシデントへの対応は、経営の根幹を揺るがすリスクに直結します。しかしながら、情報システム部門から独立したセキュリティ部門やCISO(Chief Information Security Officer:最高情報セキュリティ責任者)を採用する企業は未だ少ない状況です。
金融業界ではSOC(Security Operation Center)やCSIRT(Computer Security Incident Response Team)といった専門組織を内部に運用するなどセキュリティに対する投資と採用を積極的に進めています。 今後はIoTによるデータ収集・利活用が見込まれる製造業など、他の業界にも伝搬していくことが予想されます。
DX人材採用における成功ポイント
DX人材採用における成功ポイントについて解説します。需要の高まりを見せるDX人材だからこそ、採用する際には以下のポイントに注目することが重要です。
求めるスキル・人物像の明確化
企業が行いたいDXがどのようなもので、どういったスキルをもった人を採用したらいいのか言語化しましょう。そうすることで求人票が具体的になり、ミスマッチを防ぎ、採用したい人物からの応募を得ることができます。
またすべてのDXのスキルを持ち合わせた人材は簡単には見つけることができません。優先度をつけ、事前に定義し、採用したい人を絞り込むようにしましょう。
業務内容・ミッションの明確化
ミッションや業務内容を具体的に伝えましょう。候補者の価値観やモチベーションを理解したうえで、求職者には企業のDXのビジョンや目標を明確に伝え、魅力的な仕事内容を提示しましょう。
働く環境の整備
働く環境を整えることも大切です。柔軟な働き方や最新のテクノロジーによる効率化、キャリア開発の機会など、魅力的な働き方を提供することで、DX人材の採用につなげることができます。
IT業界にとって一般的なフレックスタイム制、在宅勤務といった柔軟な働き方の提供も方法の一つです。
DX人材の市場価値に見合った報酬・給与
DX人材の市場価値に沿った報酬を用意することも成功のポイントです。競争力のある給与パッケージや福利厚生、キャリアパスの提供など、求人の魅力を高めましょう。
選考スピードの担保
選考スピードを担保することも重要です。求職者は複数のオファーを受けることがありますので、あらかじめスケジュール、社内体制の構築、求人募集方法を決めておき、スピーディーな選考プロセスを心掛け、早期の内定を目指しましょう。
企業の文化やビジョンに共感してもらえるか
求職者との相互のフィット感も成功に必要な要素です。企業の文化やビジョンに共感できる人材を採用することで、長期的な信頼関係を築くことができます。
企業に魅力を感じてもらえるような面接
応募者が企業に魅力を感じる面接を行うことが大切です。求職者が志望度を高めるための面接を提供することで、より多くのDX人材を引き付けることができます。
DX人材を社内育成するには
DX人材を社内で育成する方法には以下の方法があります。
人材把握・要件定義
社内にどのようなスキルや知識、キャリア、志向を持った人材がいるのかを把握すること、どのようなDX人材が社内で必要なのかという人材要件を明確化しましょう。
DX人材育成計画の作成
具体的な目標やスキルの獲得方法、研修プログラムなどを定めて、従業員が自己啓発を行える環境を整えましょう。さまざまな部署から人材選出をすることで、新規ビジネスの創出につながります。
キャリアパスの提示
DX人材は常に最新の技術や知識が求められるため、成長意欲を持たせるカリキュラムや昇進制度などの導入もひとつの方法です。
情報共有・交流
社内イントラネット、社内トレーニングなどを活用して、従業員に対して育成プログラムや成果を積極的に周知しましょう。短期間で小さな成果であっても定期的にアップデートすることで社内のITリテラシーの向上やDXへの興味につながります。
マネジメント体制
上司との定期的なフィードバックやキャリア面談、目標設定など、DX人材が成果を出しやすい環境をつくりましょう。
DX人材を確保する方法
DX人材を確保するために、社内育成の方法を解説しましたが、社内育成には時間がかかることと社内全体を巻き込む必要があります。同時にDXを進め、即戦力人材を採用するには中途採用を検討しましょう。DX人材の中途採用は競争力が高いため、転職エージェントを活用するのがいいでしょう。
また、最近では、フリーランスのエンジニアやコンサルタントも増えつつあります。DX人材の活用に際しては、そうした人材も広く視野に入れておくことをおすすめします。
DX人材採用にお悩みの際はご相談ください。