エグゼクティブポジション・役員・幹部レベルの採用市場動向
エグゼクティブポジションの採用市場動向
エグゼクティブポジションの採用動向は引き続き活発な状況が続く予測です。ただ、円安の影響を受けている企業では、新規採用について慎重になっています。現在は、各企業が景況感から止めてしまっていたものを前に進める、もしくはその後を見据え、新たなアクションを取っていく動きが見えてます。
その中において、企業の方向性においてはいくつかに分かれています。
新規事業推進のための採用
社内で賄うことができない新規事業を推進できるエグゼクティブクラスの採用に力を入れる企業が増えてきています。社内で新規事業構築が難しい企業の場合、M&Aを仕掛けるという企業もあります。そのためのM&A推進や攻めの財務を行うためのCFOの採用をおこなう企業もあります。
デジタル関連職の採用
デジタル領域についてはここ4〜5年、各企業でも推進しているため、デジタル化のスピードも上がってはいるものの、業界によってはまだまだ遅れている企業もあります。その事業会社の中にあってデジタル化を推進する、取り纏めていくようなマネジメント、たとえば情報システム部の部長やCIOといったクラスの採用はまだ続いています。
また、外部から事業会社に対してデジタル化を支援していくようなコンサルティングファームのような企業においてもエグゼクティブポジションの採用ニーズがある状況です。
グローバル事業での採用
「現地企業/海外企業」へ販路を拡大している企業の場合、ビジネスの折衝相手が日本企業から現地企業、その他の海外企業となるため、ナショナルスタッフ(現地人材)の活躍がいっそう望まれます。「現地人材によるマネジメント」への転換に関しても、現地スタッフに「拠点のマネジメント」という重要な役割を任せることになります。
そこで、日本本社側にも、日本にいながらにして現地を管理、指導、支援できる体制の強化が不可欠となっています。多くの場合、かつて海外拠点に赴任していた帰任者がその役割を担っていますが、それだけでは追い付かないケースもあります。そこで、現地企業のマネジメントができるエグゼクティブの採用に動いています。
SDGs関連の採用
SDGs関連のポジションは非常に採用が増えている状況が続いています。環境配慮を目的とした脱炭素、カーボンニュートラルに関する企画推進責任者、こういったものが代表的です。
またダイバーシティー&インクルージョンといったものを責任持って進めていけるような部署の責任者クラスの採用も増えています。加えて、ガバナンスという観点でいえば、社外取締役、常勤監査役、非常勤監査役といった上級管理職の採用ニーズが出てきています。
女性幹部職の採用
SDGsへの意識の高まりから、その目標の一つに掲げられるのが「ジェンダー平等を実現しよう」。グローバル企業においては、この目標への取り組みや達成状況が投資家からも注目されており、企業価値を左右し、株価にも影響を及ぼします。
株主総会で指摘を受けたり、進捗状況の説明を求められたりするなか、管理職以上のポジションにおける女性比率を高めることが喫緊の課題となっています。
しかしながら、社内に管理職を志向する女性が少なく、女性管理職比率を高めるため、外部から招聘するケースが増えてきています。特に幹部候補・エグゼクティブクラスの採用となると、部門長レベルでのマネジメント経験が重視されますが、その経験を保有している方は希少で、採用ニーズが満たされていない状況が続いています。
コーポレート・管理部門での採用
近年、大手企業を取り巻く環境が大きく変化しています。「サステナビリティ」への意識がグローバルで高まるなか、各社は「SDGs」「ESG」関連の取り組みやその状況の開示が求められるようになっています。
「DX(デジタルトランスフォーメーション)」も推進され、ビジネスモデルの転換や働き方改革も進められています。こうした環境下、コーポレート部門・管理部門でも、これまでにない課題に向き合っており、それに対応するためエグゼクティブポジションでの採用ニーズが出てきています。
社外取締役の採用
東京証券取引所による市場区分の変更に伴い、「コーポレートガバナンス・コード」を満たす必要がでてきています。プライム市場の上場企業では、取締役会構成の独立性がより高いレベルで求められ、「独立社外取締役を少なくとも3分の1以上、必要と考える場合には過半数を選任」という内容が示されました。
それに伴い、社外取締役を積極的に採用しようという動きがみられます。求人件数の伸び率は10~20%にとどまりましたが、当社経由での採用数は前年比2倍以上に高まりました。今後もこの傾向は続くと見込まれます。また「社外取締役」の採用ニーズが高まっているだけでなく、以前と比較して、求められる人材像が変化しています。
事業承継での採用
「黒字経営だが、後継者がいない」地方を中心に、「後継難」の課題を抱える企業が増えています。オーナー経営者が高齢となり引退するケースもあれば、まだ若い2代目・3代目社長であっても自身での事業継続に限界を感じているケースもあります。
それでも「廃業」の道を選ばず、経営を引き継げる方を迎えることで事業存続を図る企業が多数あり、エグゼクティブポジションでの採用ニーズが出てきています。
新規事業のエグゼクティブポジションの人材採用動向
デジタルを活用した新規事業開発が昨今では活発化しています。特にネット関連企業では、自社が持つプラットフォームを活用して新たな領域へ展開する傾向が顕著です。たとえば、金融(フィンテック)やヘルスケアなどの新サービスを立ち上げる動きが代表的です。規模としては、大手・中小全体的に新規事業開発関連の採用も増えていますが、IPOを果たして拡大・多角化フェーズに入ったベンチャー・スタートアップ企業の新規事業開発責任者の採用が特に増えています。
製造業の新規事業としては「モノからコトへ」の変革を図る動きが活発です。たとえば、機械の製造・販売にとどまらず、「リモートでのメンテナンスシステムを開発して提供する」といった取り組みが進められており、企画・推進ができる経験者が求められています。責任者クラスのポジションの傾向として、「現職ではこの先のキャリアが見えており、物足りなさを感じる。もう一度チャレンジがしたい」「役職定年が近いが、まだまだ第一線でやりたい」という想いを持つ方が採用されています。
新規事業にかかわるエグゼクティブポジションで採用したい人材像
新規事業開発責任者のポジションで採用が決定している方々の年収帯のボリュームゾーンは、1000万円~1500万円です。
多くの場合は、担当した新規事業がスケールすれば、各種指標での評価に基づき、報酬が上乗せされるといったインセンティブプランを採用しています。 入社時は前職の年収と同水準からスタートするケースがある一方、「新規事業を牽引していくためにも、どうしてもこの方のご経験・スキルが必要」といった場合には、年収アップで採用する企業も多いです。
新規事業を担うエグゼクティブポジションの採用においては、企業によって重視するポイントは異なりますが、大まかな傾向は次のとおりです。
「0→1」の事業立ち上げ経験
即戦力として採用される人材は、新規事業を「0→1」で立ち上げた経験者です。事業計画の策定、人材採用、実行までを責任者として手がけ、黒字化させた経験は貴重です。
特定領域での豊富な経験・実績
新規事業の立ち上げ経験がなくても、特定の領域に精通し、ネットワークを築いている方も採用ニーズがあります。
たとえば、IT企業などが「新たな金融ソリューションを開発してマーケットを開拓したい」といった場合、金融の知見を持ち、金融業界で事業のマネジメントを行っていた方であれば、新規事業開発の経験がなくても採用されています。求められる業界経験としては「金融」「ヘルスケア」が多いですが、それ以外でも、企業側の「この領域へ進出したい」というニーズと合致していれば採用に至っています。
デジタルの知見/デジタルの活用法を考える力
近年の新規事業ではデジタルを活用することが多いため、デジタルの知見は必要です。ただし、求めるレベルは採用ポジションによって異なります。事業企画の経験かつシステム開発経験を持ち、エンジニアに指示を出してプロジェクトを推進できる方は採用ニーズが高いです。
しかしそのような経験を持つ方は希少であるため、マーケティングの観点で「デジタルをどのように使えばマーケットを創出できるか」を考えられるかどうかが重視されています。
「ハンズオン」で推進するマインド
エグゼクティブクラスのポジションとはいえ、「企画だけ行い、そこからの推進はメンバーに任せる」というスタンスの方は企業側も採用しない傾向があります。多くの企業から採用のために重要視しているキーワードは「ハンズオン」。自ら手を動かしてプロジェクトを推進していくマインドが求められています。
また大手企業で新規事業企画を手がけてきた方がベンチャーで新規事業企画を担う場合、「リソースが揃っていない」ことを覚悟する必要があります。大手では当たり前にあった予算や人材などのリソースがない状況でも、創意工夫を持って自ら動いていく姿勢が求められます。
デジタル/DX領域のエグゼクティブポジションの人材採用動向
デジタル/DX領域の採用は全体的に活発で、エグゼクティブポジションの採用ニーズも増えています。ここでは「事業会社」「ITサービス(SIerなど)」、それぞれについて最新の採用動向をお伝えします。
事業会社の採用動向
あらゆる業種、あらゆる規模の事業会社が、「DX」を推進できる経験者を採用したいと考えています。しかし「DX」は、企業によって目的も内容も大きく異なっており、「DX」本来の定義と異なることもあります。どのDXであっても、採用ニーズは増えていますが、現在は特に中堅~大手企業において「攻めのDX」を加速させる動きが目立ちます。
「数年前からDXに取り組んできて、自社の課題はつかめた。しかしまだ実際のサービスやビジネスにまで落とし込めていない」といった声が多く聞かれ、推進を担えるエグゼクティブクラスの経験者を採用したいという動きがみられます。
また、IT部門の内製化・強化を図る動きも活発です。情報システム部門の一階層上に「DX部門」を設置するケースもあり、その部門を統括する「CIO(最高情報責任者)」「CDO(最高デジタル責任者/最高データ責任者)」「CDXO(最高DX推進責任者)」など、CxOクラスのポジションの種類が増えており、採用ニーズが高まっています。
ITサービス(SIerなど)の採用動向
事業会社のDXを支援する立場にあるSIerなどでは、クライアント企業に対して「事業のあり方」を定義し、提案できるレベルの経験者を採用する傾向が高まっています。
募集職種は「DX推進コンサルタント」などの名称ですが、中堅~大手企業の経営陣に対するコンサルティングができるスペシャリストとして、部長クラスからプリンシパルクラスを想定したポジションで採用したいと企業は考えています。
デジタル/DX領域のエグゼクティブポジションの採用で求められる人材像
CxOクラス、エグゼクティブクラスの採用においては、1200万円~1800万円の年収帯の求人が多く見られます。ポジションによっては2000万円~3000万円でオファーが出るケースも少なくありません。
「優秀なIT人材、かつエグゼクティブクラスの採用は困難」という認知が採用企業にも広がっており、オファー年収額は上昇傾向にあります。しかし、転職によって年収アップを目指す方がいる一方、すでに収入面で一定の満足感を得ている方々は、オファー金額以上に「自身の経験・スキルをいかして事業拡大に貢献・経営を支援したい」点にこだわって転職先を選択する傾向が見られます。
企業によって重視するポイントは異なりますが、以下2点が採用したい人材の共通の傾向として見られます。
「戦略策定」の経験・スキル
経営者のパートナーとして、「デジタルをいかに経営にいかすか」という視点で、提案や戦略策定ができる方を企業は採用したいと考えています。経営陣と対話し、経営陣が考えている課題を可視化・言語化する力が重視されているのです。
そのため、デジタル領域の事業部長クラスからCxOクラス経験者に限らず、「コンサルティングファームの戦略コンサルタント」などもエグゼクティブポジションで採用されています。経営陣が誤った方向に向かっている場合も、臆することなく、知見・経験に基づいた適切な進言を期待されます。また、戦略を実行に移す際は、経営陣以外にも、社内の各事業部門・外部パートナーなど多様なステークホルダーとの適切なコミュニケーションをとり、連携できる力が重視されます。特に、「変革」を推進するポジションにおいては、多様な人を巻き込む力が欠かせません。
最新トレンドのキャッチアップ力
デジタル/DX領域においては、経験に頼るだけでなく、技術の最新トレンドにもアンテナを張り、キャッチアップできているかも求められています。どの技術やツールであれば、全社の最適化に貢献できるかを見極める姿勢や能力にも注目されます。
グローバル事業に関わるエグゼクティブポジションの人材採用動向
ここ数年、海外ビジネスを減速させていた時期もありましたが、現在は多くの企業で海外ビジネスが戻りつつあります。そのため2つのエグゼクティブポジションの採用ニーズが存在しています。
1つは日本から戦略を練って、海外をコントロールしていく海外事業部長や国際部長といったポジション。そして現地駐在をしながら現地法人を任される、もしくは地域リージョンを任されるポジションです。
海外ビジネス戦略を推進できる経験者
海外ビジネスのマーケティング・プランニング・実行を推進できる海外経験者のエグゼクティブポジションでの採用ニーズがあります。
ある中堅メーカーを一例として挙げると、中期経営計画において海外ビジネスを強化する方針を打ち出し、経営企画室が戦略を策定します。その後、具体的なプランの実行フェーズに入ったため、海外事業部門を独立させるため部門トップとして経験者を採用したいといった具合です。
海外現地法人のトップのポジション
すでに稼働している海外現地法人のトップを採用したいというニーズもあります。2020年以降、海外現地法人に駐在している方々の多くが帰国できず、任期延長となりました。その方々の帰任にともない、現地へ送り出すポジションの採用ニーズが高まっています。
一方で「日本人駐在員」によるマネジメントから「現地人材」によるマネジメントへのローカライズも進んでいることから、「ローカライズ実現の後、日本からリモートでマネジメント」を前提とした採用ポジションもでています。
対象エリアとしては、東南アジアを中心に、中東・インドなどが多く、設備・機器分野のEMS(製造受託企業)が、エマージングマーケットを狙って展開しています。
事業部長~執行役員手前のクラスの方の場合、国内勤務での年収相場は1200万~1500万円、欧米駐在で約2000万円、東南アジア駐在で1500万~1800万が目安となっています。
グローバル事業のエグゼクティブポジションで採用したい人材像
グローバル領域のエグゼクティブポジションの採用においては、企業によって重視するポイントは異なりますが、以下の2点が採用傾向として見られます。
現地の人々とのコミュニケーション力
海外現地法人の運営を担うポジションでは、ベースとして組織マネジメントの経験が求められ、M&A・PMIなどの経験も注目されます。
ただし、ファイナンシャルに強い人材というよりは、「営業」としての接点を重視しており、現地の顧客・取引先・パートナー、さらには従業員などとの接点を持ち、コミュニケーションをとってきた人材を採用する傾向が、全般的に見られます。
背景として、「コンサルティング的な手法では、現場とのギャップは埋められない」と考えられており、現地の人々の考え方や価値観に寄り添ったコミュニケーション力が求められていることがあげられます。
採用企業が対象とするマーケットの経験者
企業が対象にしているマーケット・顧客層に関わった経験が重要です。扱う商材は異なっても、「顧客を理解している」ことが採用条件として重視されるのです。
展開エリアがベトナムであればベトナムでのビジネス経験者といった具合に経験している国・地域がマッチすることも重要です。特に、西アジア・中東・インドなどは、今後進出を計画している企業が多く、これらの国でのマーケット開拓を手がけた経験がある方への採用ニーズが高まることが予想されます。
SDGs関連のエグゼクティブポジションの人材採用動向
2020年10月、政府は「2050年カーボンニュートラル」を宣言し、2021年4月には「2030年度、温室効果ガスの排出を2013年度比で46%削減」の目標を表明しました。これを受け、官民でカーボンニュートラル実現に向けた施策が加速しています。これは、SDGsの目標「7:エネルギーをみんなに。そしてクリーンに」「13:気候変動及びその影響を軽減するための緊急対策を講じる」に該当します。
機械関連メーカーやエネルギー関連会社などでは、動力をクリーンエネルギーに転換すべく開発を強化する動きがみられます。
カーボンニュートラルを実現しつつ、利益を生み出す事業を創出するため、「電動化推進」「DX(デジタルトランスフォーメーション)推進」「事業企画」などのポジションで、エグゼクティブクラスの採用ニーズがあります。技術知識に加え、経営の視点を持つ人材が採用ターゲットとなります。
またこうした採用ニーズは、大手メーカーのほか、中小企業でもでてきています。
たとえば、電子部品メーカーの子会社で社長を務めていた方が、定年退職を機に、電池関連部材を手がける中小メーカーに社長として採用された事例があります。同社は需要が高まっている領域で強みを持ちながら、社長が高齢となり後継者がいない状況だったため、技術知識と経営経験を持つ新社長を採用しました。
また、大手電機メーカー子会社で社長を務め、定年退職後に外郭団体顧問をされていた方が東証プライム上場企業の社外取締役に就任したケースや大手食品メーカー工場長が中小食品メーカー社長に就任したケースなど、数多くの採用事例が挙げられます。さらに新たなビジネスモデルやサービス開発を目指すベンチャー企業では、社長の右腕として経営企画や事業開発を担う人材を採用する動きがみられます。
女性幹部・幹部候補の人材採用動向
女性を対象とする幹部候補やエグゼクティブクラスの採用は、これまではバックオフィス系が中心でしたが、最近ではビジネスラインや製造ラインの管理職にまで及んでいます。
「サステナビリティ」施策の推進・広報
「サステナビリティ推進室」「ダイバーシティ推進室」などの「室長兼執行役員」といったポジションの採用が目立つようになってきました。サステナビリティの取り組みに関しては、「IR」も含め外部への発信も重要となります。企業の象徴的な存在として、このポジションに女性を据えたいと考える企業が増えています。
男性比率の高いコンサバティブな業界
重工メーカー、食品メーカー、建設関連会社といった、もともと男性比率が高く、女性のマネジメントクラスが少ない企業は政府が指標として掲げる女性管理職比率の数値に遠く及ばないため、女性の幹部採用に動き出しています。
社外取締役
現在、社外取締役の採用においては「女性」へのニーズが非常に高い状況です。女性社外取締役は男性同様、「経営経験」を求められるものの、絶対数として少ないため、1人の方にオファーが集中し、兼務となる実態があります。
また、社外取締役として迎えられる女性は、公認会計士・弁護士など士業の方が4分の3を占めています。4分の1は士業以外で、企業経営の経験者です。現在、下記のような経験を持つ女性は、社外取締役として採用される可能性が高いといえるでしょう。
- 日系上場企業での執行役員経験
- 大手外資系企業での執行役員またはそれに準ずる経験
企業は女性社外取締役の採用を目指しながらも、なかなか獲得できていない状況ですので、今後も積極採用が続くと見込まれます。
40代が多く、子育て中の女性もロールモデルとして採用されるケースも
入社時より役員としてお迎えいただくケースもありますが、多くの場合入社後の活躍また役員等幹部への育成期間が考慮されるため、40代の方を部長クラスで採用されることが多いです。「働き方改革の推進リーダー」「女性社員のロールモデル」として迎えられています。
採用された方も、ご自身が育児とキャリアの両立に苦労した分、その経験をいかして貢献したいという考えがあり、たとえば、「『女性活躍』という言葉を世の中からなくしたい(=それが当たり前の社会にしたい)」という志を語った女性は、企業から高評価を得ました。
海外経験を持つ女性は採用時に高い評価
あらゆる企業がグローバル展開を推進するなか、海外駐在経験者のニーズは高水準です。中でも海外駐在経験を持つ女性は非常に希少であるため、「グローバル事業推進」+「女性活躍推進」を図る企業で採用時に高く評価されています。
コーポレート/管理部門のエグゼクティブポジションの人材採用動向
コーポレート/管理部門では部長クラスを中心にCFO・CHROクラスの採用ニーズも増えています。また業種も多岐にわたります。
「CFO」ポジションに関しては、東証のグロース市場~スタンダード市場、あるいはプライム上場前後のフェーズにある企業からの採用ニーズが中心です。基本的にはCFOの経験者が求められます。ただし、IPO準備中の企業では、CFO経験がなくてもCFOに近しいポジションでの業務経験や、IPOを経験してきた方であれば採用対象となります。
「広報」については、エグゼクティブポジションに広報のスペシャリストがほとんど見られないのが現状です。各社課題はあるものの、どのような方を迎えるべきか人材像が明確化していないというのが理由と考えられます。企業によっては「1社経験の人よりも、複数の企業で広報に携わってきた経験を必要としているため、広報のコンサルタントなども採用対象となります。
コーポレート/管理部門のエグゼクティブポジションで採用したい人物像
コーポレート/管理部門のエグゼクティブポジションにて採用されている方の年収帯のボリュームゾーンは1500万円前後です。ただ採用企業は「自社の給与テーブルの水準を超えたとしても、本当に必要な人材であれば採用する」というケースも見られます。
一方、エグゼクティブポジションで転職に踏み切る方々は、年収についてはそれほどこだわらない傾向があります。ご自身の経験・スキルをいかして貢献することにやりがいを感じ、よほど生活レベルを落とすことにならないかぎり、年収は「維持」あるいは「若干ダウン」の条件を受け入れて入社する方が多いです。その裏側には、「入社後に成果を挙げて貢献すれば、年収水準は元に戻せる/上げられる」という自信が見てとれます。
コーポレート/管理部門のエグゼクティブポジションの採用は企業によって重視するスキルや経験は異なりますが、以下の5点が傾向として見られます。
採用企業か抱える課題と同様の課題を解決した実績
採用企業が抱えている課題と同様の課題に対し、解決した実績があるかどうかは重要です。企業が変われば環境もリソースも変わるため、過去の成功体験・ノウハウを「採用企業でも再現できるか」が採用活動で見極めたいポイントです。
「経営」「ビジネス」の視点
管理業務のオペレーションを回してきた管理職ではなく、「経営」「ビジネス」の視点を持ち、経営戦略に基づく資本政策・人事施策などを提案・実行してきた方が求められます。
採用企業より進んだ成長ステージでの経験
コーポレート/管理部門職の採用においては、これまで在籍した企業の成長ステージ・規模も注目されます。組織として抱える課題が共通していることが理由となります。上場準備企業であれば上場企業での経験者といったように、採用企業より一歩先の企業の出身者を採用したいという企業は多いです。採用企業と同等のステージでも、同じ課題を解決した経験がある方は採用対象となります。
多様なステークホルダーとのコミュニケーション力
「経営陣」「社内の各事業部門」「外部パートナー」「投資家」など、多様なステークホルダーと適切なコミュニケーションをとり、連携する力が重視されます。特に、「変革」を担うエグゼクティブには、多様な人を巻き込む力は欠かせません。
多様な環境での経験
転職経験があり、さまざまな環境で仕事をしてきた方は、環境変化への柔軟な適応力があると見なされるため、勤務経験が1社のみの方より、転職経験がある方が優遇される傾向にあります。ただし、1社経験であっても「子会社出向」など環境変化を経験している方であれば懸念を払しょくできる可能性があります。
社外取締役の人材採用動向
社外取締役の採用決定実績は前年比2倍以上に高まり、この採用ニーズは続くと見込まれます。ただ「社外取締役」に求められる人材像が変化しています。
社外取締役の採用が活発化した背景
社外取締役の採用が活発化した背景には、2022年4月に実施された、東京証券取引所による市場区分の変更があります。東証一部に代わる位置付けの「プライム市場」に残るために、企業は新市場の基準を満たす必要があります。その指標となるのが、「コーポレートガバナンス・コード」です。上場企業の企業統治(コーポレートガバナンス)において、ガイドラインとなる原則・指針を示すものです。
日本では2015年の策定以降、2018年に改訂、直近では2021年6月に改訂されました。最新の改訂で、ポイントの一つに挙げられたのが「取締役会の機能発揮」です。
プライム市場の上場企業では、取締役会構成の独立性がより高いレベルで求められ、「独立社外取締役を少なくとも3分の1以上、必要と考える場合には過半数を選任」という内容が示されました。さらには、「スキルマトリックス」を公表して取締役会の多様性とバランスを示すこと、他社で経営経験を持つ独立社外取締役を含めることなどが求められています。
機関投資家からの視線が厳しくなるなか、こうした指標を満たすために、社外取締役の採用ニーズが高まっているのです。
社外取締役に求められるスキル・経験とは?
社外取締役に求められるスキル・経験は、企業によって異なります。
採用要件のベースになるのが、先ほども触れた「スキルマトリックス」です。これは取締役それぞれの専門性・スキルを可視化し、一覧表にしたもので、縦軸に取締役名、横軸に企業が必要とする経験・スキルの項目を記載し、各自が有する経験・スキルに●を付ける形で作成されます。
経験・スキルの項目選定は企業側の判断に委ねられますが、たとえば次のようなものが挙げられます。
企業経営 |
マーケティング・営業 |
財務・会計 |
IT・デジタル |
人材・労務 |
法務・ガバナンス |
グローバル経験 |
SDGs・ESG・サステナビリティ |
DX(デジタルトランスフォーメーション) |
スキルマトリックス例
取締役 | 企業経営 | マーケティング・営業 | 財務・会計 | IT・デジタル | 人材・労務 | 法務・ガバナンス | グローバル経験 | SDGs・ESG・ サステナビリティ | DX(デジタルトランスフォーメーション) | |
A氏 | ● | ● | ● | |||||||
B氏 | ● | ● | ||||||||
C氏 | ● | ● | ● | ● | ||||||
D氏 | 社外 | ● | ● | ● | ● | |||||
E氏 | 社外 | ● | ● | ● | ● | ● | ||||
F氏 | 社外 | ● | ● | ● | ● | ● | ● |
取締役メンバーの専門性やスキルが偏らず、相互補完できるように取締役会を構成することが重要ですので、各社、既存の取締役にはないスキルを持つ社外取締役を採用することになります。また、利益相反とならないよう、異業界から採用するケースが多く見られます。
経験・スキルの要件を満たすほか、「カルチャーフィット」の観点も注目されます。その企業が掲げる「理念」「パーパス(企業の存在意義)」などに共感できるかどうかも採用では重視されています。
事業承継に関わるエグゼクティブポジションの人材採用動向
買収したPEファンド/事業会社が経営者を採用
M&Aによって企業を買収したPE(プライベート・エクイティ)ファンド/事業会社が経営人材を採用し、次期社長として買収先企業に送るケースが多数あります。PEファンドの場合は、転職エージェントやヘッドハンターが、次期社長にふさわしい方を探し、PEファンドへ提案するケースが多いです。事業会社の場合は、一般的に、自社の社員を次期社長として買収先企業に送ります。しかし、自社に適切な社員がいない場合は、外部から後継者を採用しています。
自社で後継者を採用
M&Aを行わず、「自分の後継者は自分で探す」という意向のオーナー経営者もいらっしゃいます。
この場合、まずは「COO」「取締役・事業責任者」などのポジションで採用し、半年~1年程度様子を見たうえでCEOに就任していただくケースが見られます。入社時点からCEOを任せる場合、オーナー経営者が勇退して完全に任せるケースもあれば、「会長」「顧問」「アドバイザー」のような形で、しばらくの期間、経営に関与するケースもあります。
一方、「中継ぎ」の役割を求めるケースも見られます。「自身の子息・息女に承継する予定ではあるが、まだ若く経験不足。そこで中継ぎとして社長を務めながら、子息・息女を経営者として育成してほしい」と考え、その役割を担ってくれる方を採用するケースが出てきています。。
事業承継に関わるエグゼクティブポジションの採用で求められる人材像
承継する組織の年齢層によって異なりますが、ある程度、経営経験が豊富であることが求められるため、50代~60代前後の方が採用に至るケースがもっとも多い傾向にあります。
このポジションで採用されている方の年収は、企業の規模や体力によって大きな差があります。
エグゼクティブポジションに採用される方のボリュームゾーンは年収1,500~2,500万円ですが、PEファンドを介して就任される場合は比較的高めに設定されることが多く、また、企業規模が大きくなると、年収3,000~4,000万円の提示がなされるケースもあります。一方、企業が直接後継者を採用する場合は、年収1,200~1,500万円前後の求人が多く、企業の経営状況によっては2000万円以上提示されるケースもあります。事業承継に関わるポジションでの転職を選択する方々に目を向けると、「収入」や「肩書」を求めるのではなく、「自身の経験・スキルをいかして社会に貢献したい」「次世代の育成を担いたい」といった志向をお持ちの方が多く見られます。
企業によって重視する経験・スキルは異なりますが、大まかな傾向は以下のとおりです。
PEファンドでは「投資先企業での経験」を求める
PEファンドでは、経営経験が豊富な人材が求められています。いわゆる「プロ経営者」と呼ばれる方々です。これまでにPEファンドの投資先企業でのCEOを経験した方であれば、「共通言語で対話ができる」「ファンドが期待していることを理解している」といった点で、採用されています。
事業会社では「事業部長クラス」を可とするケースもある
事業会社では、「長く務めてほしい」という意向から、数年ごとに企業を渡り歩くタイプの経営者は敬遠する傾向があります。自社と親和性がある業界で、長く経験を積んだ方が求められます。オーナー経営者がリスペクトする企業の出身者も好まれています。オーナーがしばらくの間会社に残り、「次期経営者を育てる」という意向の場合、経営者としての経験がない「事業部長」クラスの方が採用されるケースもあります。
引き継ぐ企業より「やや大規模から同等規模」の経験が必要
「経営経験がある」といっても、数十名規模の企業の社長を務めた方が、数百名規模の企業の社長を引き継ぐのは現実的ではありません。任せる企業の規模よりもやや大きな規模の会社、あるいは同等規模の会社での経験を採用企業は求めています。
新しい環境・文化になじむ柔軟な姿勢が求められる
就任直後から前職のやり方を踏襲しようとする方は、敬遠される傾向が見られます。自身のやり方を断行したとしても、失敗に終わることが少なくありません。まずは新しい環境・文化を受け入れ、なじもうとする姿勢が求められます。特に、首都圏から地方企業に転職した場合は、警戒心を持たれるケースもあります。既存の従業員を尊重し、人間関係を築けるようなパーソナリティが重視されます。