エネルギー業界の採用市場動向

【2024年】エナジー・インフラストラクチャー・プラント業界の採用市場動向

エネルギー業界の最新動向

2012年以降、FIT(再生可能エネルギーの固定価格買取制度)導入により、多くの企業が太陽光発電事業に新規参入し、同時に中途採用募集も増加の一途を辿りました。その後もバイオマス、陸上風力、そして洋上風力と再生可能エネルギー業界は急拡大を続けています。また、2016年の電力小売全面自由化、2017年の都市ガス自由化によって業界に参画した企業も多く、事業者や消費者が自らインフラを選択できる時代になりました。

今後は2030年のエネルギーミックス実現に向けた動きがさらに加速していくと予測しており、再生可能エネルギーの普及拡大にとどまらず、「脱炭素」、「SDGs」といったキーワードに付随した動きが各社にて活発化しています。

こうした変革によって業界動向も大きく変わっていきますが、その分ビジネスチャンスも多く、引き続き成長産業であることは間違いないでしょう。

エネルギー業界におけるカーボンニュートラル、脱炭素社会の実現に向けた挑戦は続く

エネルギー問題の解決は世界的な課題であり、日本も例外ではありません。日本においても2050年のカーボンニュートラル、脱炭素社会の実現に向けた動きが活発になっており、エネルギーミックスに向けた発電所開発や、EV・モビリティなどの新規事業などの需要が増え続けます。今後はエネルギー業界だけではなく、全ての業界、企業が環境課題に対する取り組みを強化する必要があり、「環境」、「エネルギー」といったキーワードを事業運営に融合させていく流れになりつつあります。それに伴う新たな事業やサービス創出等、多くのビジネスチャンスが生まれることが予想されます。

エネルギー業界のSDGsへの取り組み

エネルギー業界はSDGsの7番目の目標「エネルギーをみんなに そしてクリーンに」の実現を担う中心的存在です。

東日本大震災以降、再生可能エネルギーへの注目が高まり、電力の小売自由化の後押しもあって、太陽光発電を中心とした再生可能エネルギー事業への取組みが進められてきました。

そして2020年、政府が「2050年までに温室効果ガスの排出を全体としてゼロにする、2050年カーボンニュートラル、脱炭素社会の実現を目指す」と宣言したことで、多くの企業が「カーボンニュートラル」をテーマとした取組みへ舵を切り、期待が持てる新分野として「洋上風力発電」事業の模索も始まりました。

また、新規事業部門を立ち上げる動きも見られます。バーチャルパワープラント(VPP)/仮想発電所といった複数箇所に点在する小規模電源設備・機器を統合・制御し、1つの発電所のように機能させるものや、EV(電気自動車)の普及に向けたカーシェアリングや充電スタンド運営などの事業、電力トレーディング事業などを開発する動きも出てきています。このような新規事業展開にともない、これまでになかった採用ニーズもうまれています。

コロナ禍で一時停滞した海外事業についても、大手企業や中堅規模の企業でも再燃の傾向が見られます。

エネルギー業界の採用動向

エネルギー業界経験者の根強い採用ニーズ

業界経験者を求める傾向は根強くあり、再生可能エネルギーや電力小売などの領域で、多種多様な職種の募集が継続して行われています。

大手エネルギー企業では、業界経験者の管理職採用のニーズは根強く、40代・50代で電力・エネルギー業界の経験者であれば、年収1200万円程度での採用も珍しくありません。また、参入が相次いでいる外資系企業は年収を高く設定しており、30代前半の専門職(スペシャリスト)採用に1000万円以上のオファーを出してでも採用したいと考えてる企業も少なくありません。

国のインフラを支えるという目的に加え、エネルギーミックスやカーボンニュートラルなど10年後、20年後を見据えた変革を求められているという側面から、若手からミドル、ベテランにいたるまで、採用の需要が落ちることはないでしょう。

日本の将来を担う洋上風力発電はアフターフォローを意識したポジションの採用

2020年から洋上風力事業への注目度が高まり、関連企業・求人数が大幅に増加しました。2022年までは事業開発やファイナンス、風況解析、建設PMの募集が中心でしたが、国内第一号の洋上風力発電所の竣工に伴い一部の企業からは、AM(アセットマネジメント)やO&M(オペレーション&メンテナンス)などの建設後のアフターフォローを意識した募集も徐々に見かけるようになりました。

洋上風力発電所の多くは北欧にあり、国内で立ち上げに携わった経験者は皆無に等しい状況です。そのため、海上プラントの立ち上げ経験などの、関連性が高いと思われるスキルや経験を持つ方に対象範囲を広げて採用活動を進めています。

2023年6月末にRound2入札期間も終わり、2024年にかけて洋上風力業界の行く末を占うとされる結果も発表される予定となっております。引き続き大手企業の洋上風力発電事業参加のニュースなどもあり今後も洋上風力発電事業は拡大が見込まれております。事業参入する企業も増えているため採用トレンドも活発に変化していきます。

即戦力であればエネルギー業界外からも採用

大手も新規事業への投資に意欲的ですが、新しい分野に精通した人材は業界内には限られているため、エネルギー業界外からの採用が活発です。

特に40代はプレイヤーとしての経験が十分にあり、チームをまとめる役割が見込める年齢層であることから、スキルと経験がマッチするポジションであれば業界外からの採用であっても年収をあげてオファーします。マネジメント経験や人事評価経験がある方は採用でも高評価で、採用ニーズが高い状態です。

エネルギー業界では独自の新規事業に積極的に投資を進めています。その多くはこれまでのエネルギー事業とは直接関係のない事業も多く、外部から即戦力を採用する傾向が顕著です。

またカーボンニュートラルなど、ビジネスにおける歴史が浅く、先行きが不透明な領域については、エンタープライズ向けの製造業など関連する技術や経験を持つ人材を幅広く採用する傾向もあります。

ベンチャー企業・スタートアップ企業ではベテランの採用が活発化

新たな政策の影響を受けて2000年以降に新規参入した企業やベンチャー企業では、老舗の大手エネルギー会社出身で発電所の立ち上げ経験者や売電事業のベテランの採用が活発化しています。古い人事制度が根強い老舗企業は60歳に到達すると、3分の1程度の年収で有期雇用契約に切り替わるケースがある中で、ベンチャーなど若い企業の場合は有期雇用契約の切り替えがないケースもあります。そのため、大企業並みの待遇や福利厚生はないものの、ある程度の収入を確保しながらこれまでの経験をいかして事業を自らの手で成長させたいというベテランを採用したいと考えています。

エネルギー業界のSDGs関連の採用動向

新規事業開発

各社、既存事業以外の活路を見出すために、新規事業を模索、または事業化を見据えた動きが活発です。それに伴い、採用ニーズも変化しておりEV、モビリティ、P2P、VPP(バーチャルパワープラント)、アグリゲーションビジネス、水素、アンモニアといったキーワードが多く見られるようになりました。

政策の影響を受けやすい業界のため、各事業者がロビイングや制度対応を行い、脱炭素の波に乗る動きが増えています。こうしたニーズに合致する経験者の市場価値は非常に高く、企業側の採用意欲も高い状況です。

エネルギー業界の新規事業の取組みにおいては、人材が足りていない状態となります。そのため、自ら企画を立てて推進できる、ハンズオンで動ける方を採用したいと考えています。情報収集やパートナー候補企業への交渉など、主体的に行動を起こせる方を求めています。

エネルギー業界の採用といえばエンジニアが中心でしたが、新規事業開発の採用ポジションが急増し「企画系」の職種が約半数を占めるようになってきました。

なかでも求められているのは、自社が取り組む新規事業テーマと親和性がある業界・分野出身の方です。エネルギー関連の事業企画経験者はもちろん、たとえば「EV」関連の新規事業では自動車業界や不動産デベロッパー業界などにいた方が採用されている事例があります。また、PPAモデルやTPOモデルといった太陽光の新たなビジネスモデルに関する募集や、自社遊休地に太陽光発電所を開発する企業も増加しており当面の間は積極採用が継続します。

これまでにない新規事業も多く、「経験者」がいない状態のため、応用できる類似分野の知見を持ち、環境や社会貢献への共感や知見が高い方が求められています。

また、新たなエネルギー開発に取組む経営者たちは、「世の中を変えたい」「社会に貢献したい」という強い思いを抱いています。政策の方向も含め、先の見通しが不透明な状況においても、「自分たちの手で変革していく」「新しい業界を創造していく」という意思と覚悟を持っている方を歓迎しています。未知のものにチャレンジし続ける業界でもあるため、好奇心を持って新しいことを吸収していく姿勢も採用基準として重視しています。

DX/GX推進プロジェクトマネジャー

エネルギー事業においては、「バーチャルパワープラント(VPP)/仮想発電所」を例に挙げたように、システムで制御するものが多くなっています。

そこで、DX(デジタルトランスフォーメーション)の推進を担う、デジタルの知見を持つプロジェクトマネジャーが求められています。このようなポジションは、「GX(※)推進プロジェクトマネジャー」といった職種名で採用されているケースもあります。

※GX=グリーントランスフォーメーション。化石燃料をなるべく使わず、クリーンなエネルギーを活用していくための変革やその実現に向けた活動を指します。

電力トレーダー

発電事業者と小売事業者をつなぐ「電力トレーディング」の事業においては、金融の知識が必要となります。従来のエネルギー業界には経験者がいないため、金融業界出身者が採用されているほか、リスク管理の経験を持つ方も採用対象となっています。

実際、証券会社のリスク管理コンサルティング経験者で、「環境」「エネルギー」に強い興味を持つ方が、商社系のエネルギー企業に採用された事例があります。


エネルギー業界での人材採用にお悩みの際はご相談ください。